更新日:2025年2月10日
施政方針は、市政運営にあたっての基本姿勢や当初予算の概要、主な事業について述べたものです。
目次(ページ内)
市政運営の基本姿勢
はじめに
はいさい ぐすーよー ちゅーうがなびら。
私が市長に就任後、全力で市政運営に取り組み、瞬く間に2年が経過いたしました。この間、コロナ禍を経験した中での市民の価値観並びにライフスタイルの多様化をはじめ、生成AIの台頭によるデジタル化の進展など、私たちを取り巻く生活環境は目まぐるしいスピードで変貌を遂げております。
時代を見据えた市民ニーズに的確に対応していくためには、蛇が脱皮をするように、固定観念を破り、新たな成長に向けた大胆な舵取りが必要になってくると考えております。
県都那覇の揺るがない発展に向け、市民一人ひとりの声に耳を傾けていくとともに、官民連携の下、質の高い行政サービスを提供していくことが今後ますます重要になると確信しております。
確固たる思いを胸に、持続可能な未来を拓き、「笑顔広がる元気なまちNAHA」を実現させるため、市職員と共に全力で邁進していく決意でございます。
市民の皆様並びに、本市議会の皆様におかれましては、市政へのご理解とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
それでは、令和7年度の市政運営の基本姿勢と予算案、主要事業をあわせてご説明申し上げます。
ゆたさるぐとぅ うにげーさびら。
受け継がれた発展を未来につなぐ
先の沖縄戦では、10・10空襲により、当時の那覇市の約9割が焼失し、尊い命の犠牲だけでなく、それまで培われてきた伝統文化や地域社会のほとんどが暗雲の闇に包み込まれ、絶望感は計り知れないものがあったと思います。
しかしながら、先人たちは雲外蒼天の精神で、逆境を乗り越え、国際通りの「奇跡の1マイル」など、復興を着実に成し遂げてまいりました。
振り返りますと、私が幼い頃、母と訪れた公設市場は、様々な沖縄の食材がずらりと並び、常に人のぬくもりに満ち溢れ、明日への活力を感じさせられる場所だったことを今でも鮮明に覚えています。
その後も、跡地利用の要となった那覇新都心の開発、モノレールの開通といった時代の潮流を的確に捉え、那覇市の発展にご尽力いただきましたこと、先人に対し、深甚なる感謝と崇敬の念に堪えません。
これまで私は、その築き上げられた土台を踏みしめ、確実に一歩進める市政運営を念頭に各施策を展開してまいりました。
そして今、LRT整備をはじめ、泊漁港周辺地域の活性化などに向けた「県都那覇の振興に関する協議会」の再開や、民間が主導する「GW2050 PROJECTS推進協議会」への参画などを通して、夢のある輝かしい未来に向け、飛躍の年となることを思い描いております。
先人の思いを胸に、発展し続ける那覇市であるために、足踏みすることなく、これからも果敢に挑戦してまいります。
平和を希求する想いを世界へ
今年は沖縄戦終戦から80年という節目の年です。
「なぐやけの碑」には、那覇市出身の戦没者名簿が長い歳月を経た今でも大切に奉納されており、戦争の惨禍を決して忘れることなく、愚かな戦争を再び繰り返してはならないという、恒久平和への強い決意がアジアや世界の人々に向け発信されております。
世界に目を向けると、現在も各地域で激しい争いが続いており、多くの方が犠牲となっている痛ましい現実があります。
そのような中、昨年12月、「日本原水爆被害者団体協議会」がノーベル平和賞を受賞いたしました。
それは長きにわたり、「再び被爆者をつくるな」を合言葉に、核兵器廃絶を訴え続けたことが世界に認められたものであります。私も、苛烈な地上戦を経験した沖縄に生きる者として、争いのない平和な世界を訴えてまいります。
私たちは、先人の語り継いできた戦争の悲惨な記憶を決して風化させてはいけないという揺るぎない信念を受け継ぎ、本年開催を予定している、本市と長崎市、広島市の三市長によるトークセッションなど、あらゆる機会を捉え、世界に向けて想いを発信してまいります。
備えることが安全の第一歩
昨年4月の台湾地震の影響による津波警報では、市民の皆様への情報伝達や外国人への避難指示の難しさ、避難時の交通渋滞など、災害に際しての課題を再認識させられました。8月には南海トラフ地震臨時情報の発表もあり、自然災害の危険性を身近に感じる出来事が近年続き、災害への備えが今まで以上に求められております。
本市においては、これまで避難所の整備や災害備蓄品の確保といった基本的な対策に加え、地域住民への防災講話や市民参加型の防災訓練などを通して、市民の防災意識向上に取り組んでいるところです。
中でも、企業との協働による「とつぜんはじまる避難訓練」は、スマホで気軽に参加でき、避難時の必要な情報が得られたことから、民間のコンテストでも上位入賞を果たすなど、好評を博しました。
市民の皆様には、自らの居住地域における危険箇所、避難経路、避難場所の確認や、もしもの時に備え個別に災害備蓄を行うことに取り組んでいただきたいと考えており、本市も市民の皆様と連携しながら、その取組を全力でサポートしてまいります。
災害は突然襲い掛かってくるからこそ、平時からの備えが重要です。いざという時の冷静で、適切な行動につながるよう、一人ひとりの備えの積み重ねが、被害を軽減し、大切な人を守る力となります。
市民の皆様と一丸となり、防災・減災に向けて、安全安心なまちを構築してまいります。
未来を育む、心温かな子育て支援
昨年は、若い世代の皆さんと接する機会が多い年でした。アウトオブキッザニアでは職業体験にチャレンジする子どもたちの目の輝きに、那覇市若者ミライ議会では議論する大学生の真剣なまなざしに触れ、本市の明るい未来を肌で感じることができました。
子どもはかけがえのない宝であり、すべての子どもを守り育むことは私たちの責務であると考えております。しかしながら、現実には、貧困や虐待などにより苦しんでいる子どもや、子育てに悩み孤立している世帯が存在しており、危惧されるところです。
私たちは、子どもが幸せに育ち、学び、生活していくための権利を守っていく必要があることから、その基礎となる「(仮称)子どもの権利条例」の制定に向けて取り組んでまいります。
また、子どもの成長していく過程における支援についても、長い時間軸で、妊娠期から切れ目なく取り組むことが重要であるため、「こども家庭センターなは」を通して、きめ細やかな支援を届けてまいります。
健やかに成長した子どもが、やがて社会を支える一員となり、より良い環境に発展させていく、子育てへの支援はその土壌となりうるものです。様々な樹木から色とりどりの花が咲き、実となるように、すべての子どもが、自分らしくのびのびと育ち、希望ある未来を描ける社会を目指してまいります。
洗練され、輝きを放つ地域経済を目指して
琉球王国時代から受け継がれてきた地場産業の泡盛が、日本の「伝統的酒造り」としてユネスコの無形文化遺産に登録されたことに、心から嬉しく思うと同時に、これを契機に本市産業の振興発展に期待が膨らみます。
那覇に息づく伝統的な文化や芸能、歴史的遺産、そして国際通りをはじめとするまちの賑わいは、国内外からの観光客を魅了し続けております。特にアジア地域からの旺盛な需要は、確実に取り込まなければなりません。「また訪れたい、もっと長く滞在したい」と思ってもらえるような、観光コンテンツの造成に注力するとともに、昨年策定した「都市型MICE振興戦略」に掲げる地域資源の利用促進などの施策を、官民連携により着実に推進してまいります。
昨今、経済社会は長引く人手不足や物価高騰の影響が懸念されつつも、確実な景気回復が感じられます。働く市民が豊かさを享受するために、企業におけるDX促進による労働生産性の向上や地域特産品の消費促進、中心市街地の賑わい創出等、これらを着実な地域経済の活性化につなげるため、積極的な経済施策を推進してまいります。
空と海の玄関口に位置する本市の立地特性を最大限に活かし、南国の香りと深い風味を持つ泡盛のように多くの人をひきつけ、独自の輝きを放つ地域経済を目指し邁進してまいります。
住み続けたいまちづくり
牧志駅の袂を流れる安里川に架かる蔡温橋の周辺は、かつては那覇の港町として交易と文化が交わる場所でした。その橋の名の由来となった琉球王朝三司官の蔡温は、当時、那覇と首里を結ぶ港や河川などを整備し、商船を呼び込むことで交易を広げ、人々の暮らしの向上に力を尽くしたと伝えられております。
蔡温が手掛けた事業は、現代の都市整備にも通じるものであり、本市においても、物流・人流の拠点としてその地理的優位性を活かしつつ、地域資源を大切に育みながら、市民生活の向上を目指し、まちづくりを進めております。さらに、官民連携による漫湖公園や新都心公園、新真和志複合施設の整備事業や、市内を横断するLRTの整備に向けた事業も着々と動き出しており、地域に賑わいと交流を生み出す新たな都市の可能性の創出に向け、しっかりと取り組んでまいります。
そして、まちづくりにおいては、環境の視点も欠かせません。誰もが移動しやすい交通網の整備による公共交通中心のライフスタイルへの転換や、再生可能エネルギーの活用などを進め、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」の実現を推進してまいります。
今後も人口減少・少子高齢化が懸念される中、先を見据えた持続可能なまちづくりと、都市の機能を高め、人が集まる付加価値を創り出すことが求められます。「誰もが訪れたい、住み続けたいまち」を目標に、都市機能と自然環境が調和した那覇の未来に向け、決断と実行を続けてまいります。
健やかで笑顔があふれる暮らしを
昨年も、爽やかな青空のもと、NAHAマラソンが開催されました。万国津梁の鐘の響きとともに走り出すランナーへ声援を送りつつ、手の込んだ仮装姿の方を見つけるたびに、思わず笑みがこぼれます。楽しみながら健康につながっている様子は、まさにウェルビーイングを実践していると感心させられます。
しかし一方では、日々の忙しさから健康に意識が向けられず、早い時期に医療や介護へつながる方も多いことから、生涯健康で過ごせるよう、若い世代からの健康意識の向上に取り組む必要があります。食事や生活習慣についての講習、健診・保健指導などの健康づくりの取組を通して、市民の皆様の健やかな生活を後押ししてまいります。
市民が長く健康でいるためには、安心した暮らしを支える仕組み作りも肝要となります。経済的、家庭的な問題や精神的な要素など、一人ひとりの様々な課題に寄り添うことができる包括的な支援体制の確立もしっかりと進めてまいります。
また、新那覇市立病院の開院による医療サービスの向上や、消防への高機能消防指令システムの導入など、医療や医療を支える分野についても機能強化を図り、市民の健康と命を守るための環境を整えてまいります。
アメリカの哲学者ラルフ・ワルド・エマーソンは、「健康は第一の富である」との言葉を残しております。それは、心身の健康維持が、充実した生活につながるため、何事にも優先して健康づくりに励むことの大切さを示唆しています。本市においても、市民一人ひとりの健康づくりや課題解決に向けた施策を展開し、市民の皆様の暮らしを支える活力につなげてまいります。
学びや成長を支える環境が未来につながる
うちなーぐちで「
子ども達の教育の質を高め、学びの向上につなげていくためには、教職員の職場環境を整えることがますます重要になってまいります。
本市ではこれまで、教育現場の環境改善に向け、教職員の心のケアを始め、業務負担軽減に向けてのDX推進などを図ってまいりました。引き続きタスクフォースを中心に対策の強化に取り組んでまいります。
次に、不登校等の課題を抱えた子ども達の生活環境改善に向けては、子ども達一人ひとりの実情に応じたきめ細やかな支援を通して、子どもが社会とつながり、健やかに成長していけるようサポート体制を強化してまいります。
また、私は公約において、沖縄県と連携した学校給食費の無償化を掲げてまいりました。中学校の給食費については、沖縄県に加え本市が半額補助することで完全無償化を実現いたします。さらに、小学校の給食費についても、公約に誠実に向き合い、小中を問わず等しく経済的な負担軽減を図るため、沖縄県に先行し、本市の責任として半額補助を実施することを決断いたしました。
小学校も含めた完全無償化の実現に向けては、引き続き県に対し要請を行い、すべての子どもとその家族に分け隔てのない支援が行き渡るよう、取り組んでまいります。
子ども達が希望を胸に未来へはばたける社会を目指し、教育環境の整備に全力を尽くしてまいります。
つながりが発展し、今、世界へ
本市では、1998年に策定された第3次那覇市総合計画より「協働」を掲げ、約30年にわたり「協働によるまちづくり」を進めてまいりました。それは、旧本庁舎に設置された「NPO活動支援センター」での活動から始まり、「なは市民協働プラザ」の開所や小学校区におけるまちづくり協議会の設置、なは市民協働大学による人材育成など、市民とともに育むまちづくりを目指し、協働の裾野を広げてまいりました。
そして昨年、誰もが多様性を尊重し、寛容な心を持つ社会の実現に向けて、国際的な視点に立ち、市民を含め企業など全ての主体とのパートナーシップを築いていくための第一歩として、国際連合大学と連携協定を締結いたしました。この協定が、それぞれが持つ独自の強みを引き合わせることで、地域課題解決の糸口となり、ひいては、SDGsの理念である、「誰一人取り残さない持続可能な開発目標」の達成につなげていきたいと考えております。
市民の皆様と長年にわたって紡いできた協働の「わ」が、世代を超え地域に根付いていくとともに、この「わ」が途切れることなく広がり続けるよう、「協働」の歩みを着実に進めてまいります。