更新日:2022年4月28日
結核について
戦前は日本人の死亡原因第一位で、「亡国病」と恐れられていましたが、現在は医療技術や生活水準の向上で治る病気となりました。患者数も減り続けてきたので昔の病気と思われてきましたが、最近になって病院や老人保健施設、学校などでの集団感染が発生しています。沖縄県でも1年間に200~250人の結核患者が発生しています。
結核とは
結核は、結核菌という小さな菌を吸い込み、菌に感染することでおこる病気です。感染後すぐに発病することもあれば、何十年も経って体力が衰えたときに発病することもあります。代表的な「肺結核」以外にも、胸膜や腸、骨にも病巣を作ることがあります。
「感染」と「発病」の違い
結核菌が肺に入り、肺の奥(肺胞)まで入り込んで定着した状態を「感染」といいます。しかしこの状態でも、体に悪い影響を与えていなければ病気ではありませんし、他の人にうつす心配もありません。
菌が体内で活動し、体に症状(せきなど)が現れて、治療が必要な状態になると「発病」といいます。
結核は、感染した人全員が発病するわけではなく、感染した人のうち1~2割が発病するといわれています。特に、体の抵抗力が低下すると結核菌が活発になり、症状が現れて発病となります。
発病しやすい時期
感染後6ヶ月~2年までは発病しやすい時期です。この期間は、体の抵抗力が落ちないように、普段よりも健康管理が必要になります。まれに、感染から数年~数十年後に発病することもあります。
発病しやすい方
高齢者や、糖尿病の持病がある人、副腎皮質ホルモンによる治療中の人、人工透析を受けている人、低栄養状態の人、大量飲酒をする人などは発病しやすい傾向にあるようです。
かぜに似た症状に注意しましょう
結核の初期症状は「せき、痰、発熱」などで、風邪によく似ています。これらの症状が2週間以上続いたら早めに医師の診察を受けましょう
結核の発見と治療
結核の検査
結核かどうか診断するためには、主に次の3つの検査が行われます。ほかに、CT検査や組織検査を行うこともあります。
(1)胸部エックス線撮影検査(胸部レントゲン検査)
肺結核は、胸部エックス線撮影検査で発見されることも多く、症状がない初期の肺結核でも胸部エックス線写真で発見されることがあります。
(2)ツベルクリン反応検査
結核菌に対する免疫の有無を調べる検査です。ツベルクリン液という薬を皮膚内に注射して、その反応の度合いで判定します。しかし、過去にBCG予防接種を受けた人も反応が出てしまうため、結核菌感染なのか予防接種のためなのか、区別がつきにくいこともあります。
(3)喀痰検査
痰の中に結核菌がいるかどうかを調べるもので、結核の診断をするときに重要な検査です。
喀痰検査に、A)塗抹検査(特殊な方法で結核菌だけを染めて顕微鏡で確認する)と、B)培養検査(菌を培養して結核菌かどうかを確認する)の2種類があります。Aの検査で陽性と判断されたときは、結核菌を周囲の人にうつしてしまう可能性があります。
(4)QFT(クオンティフェロン)またはT-SPOT検査
血液中に、結核菌に対する抗体があるかを調べる検査です。抗体があれば結核菌に感染していると判断されます。
結核の治療
結核は、薬をきちんと飲めば治る病気です。
薬の種類や量・期間は人それぞれで変わりますが、だいたい3~4種類の薬を6~9ヶ月間、きちんと服用することで治ります。
薬を途中で飲まなくなってしまった場合、普通の結核菌が薬に耐性を持つ状態となり、これまでの薬が効かない薬剤耐性菌となってしまうことがあるため、医師の判断のもとに正しく服用することが大切です。
服薬を忘れないためには
(1)時間を決めて服薬する
「朝ごはんを食べたら、薬をのむ」など、生活習慣のなかで、服薬のタイミングを決めておくとよいでしょう。
(2)薬は目のつきやすい場所に置く
食卓机や冷蔵庫の扉など、普段から目が行くところに薬を置いておくと飲み忘れを防げます。
(3)家族など周りの人にも協力してもらう
長期間毎日ご自身だけで薬を忘れずに服用するのはとても大変です。ご家族など周囲の方にも協力してもらいましょう。
服薬治療の支援(DOTS)があります
6~9ヶ月の間、薬を毎日服用するのはとても大変なことです。多くの方が飲み忘れます。そのため、ご本人の協力はもちろん、ご家族、医療機関や薬局などと協力し、飲み忘れなどがないかを保健所が管理し、継続的に支援するのがDOTS(ドッツ)(Directry Observed Trestment Short-course:直接服薬確認療法)です。具体的には服薬を目前で確認したり、薬の空袋や残った残薬を数えて記録することで、確実に服薬が続けられるよう支援していく方法です。
体の抵抗力をつけましょう
結核は体の抵抗力が弱まると発病しやすくなります。日ごろから十分な睡眠と食事、適度な運動を心がけて体調を整えるよう気をつけましょう。
年に1回、健康診断を受けましょう
結核は健診で発見できます。年に1度は職場や学校などで行われる健康診断(胸部エックス線検査)を受けましょう。65歳以上の方は、法律によって年1回の健康診断が定められています。保険者が実施する健康診断を活用してください。
もし、感染・発病していても軽いうちなら人にうつすことはないので集団感染を防げ、入院の必要もなくなります。
赤ちゃんにはBCG予防接種を
まだ抵抗力の弱い乳幼児が結核にかかった場合、結核性髄膜炎を発症するなど重症化しやすいといわれています。BCGは結核の予防接種で、結核予防に高い効果があるとされ、安全な予防接種として世界的に広く用いられています。予防接種を受けることで、万が一かかってしまっても重症化を防ぐことが可能です。生後3~6ヶ月未満の時期に赤ちゃんの体調をみながら、お住まいの市町村の案内に沿って予防接種を受けましょう。
BCG予防接種を受けた後
BCGを初めて接種した場合、接種後10日ごろから接種したところが赤くなり、接種後1~2ヶ月ごろまでに化膿したりします。これは異常な反応ではなく、BCGワクチンがちゃんとできた証拠です。自然に治りますので、絆創膏を貼ったりせずに、そのまま清潔を保ってください。
※コッホ現象:子どもがBCG接種前に、すでに結核患者さんと接触して感染していた場合、BCG接種後7日以内に接種したところに赤いポツポツ(発疹)ができて化膿することがあります。
初接種と比べて早期に起こる強い局所反応で、これを「コッホ現象」といい、初接種より早く2~4週間で治ります。この反応が見られた場合は、お住まいの市町村の予防接種担当課へご相談ください。
那覇市在住の方の予防接種情報についてはこちら>>市予防接種ページ
※副反応:まれに、接種した側のわきの下のリンパ節が腫れることがあります。通常はそのまま様子をみるだけで大丈夫だと言われていますが、接種部がただれたり、2センチメートル以上の大きな腫れ、化膿することもあります。異変を感じた場合や気になる症状などが出た場合、まずは接種医療機関にご相談ください。
接触者健康診断
接触者健康診断は、患者様の家族や同居者、学校や職場、その他の場所で接触し、感染が疑われる方に対して行われます。接触者健康診断が必要と判断された方には原則保健所で必要な検査を受けていただいていますので、保健所からご案内差し上げます。感染を受けてから6ヶ月~2年の間に発病することが多いため、長い方では2年間定期的に健診を受けていただくこともあります。
結核の患者様と接触したなど、感染が心配な方はお近くの保健所へご相談ください。
那覇市保健所 108相談室:098-853-7972
結核についての電話・来所相談 | 月曜~金曜 | 受付 8時45分~11時、13時~16時30分 |
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接触者健康診断 | 月曜、水曜 | 9時~11時 |
※令和2年3月以降、新型コロナウイルス感染症の影響により業務を縮小している可能性がありますので、市保健所から健診のご案内が届いた方はそちらでご確認ください。
県内の他市町村にお住まいの方は、管轄の保健所へご相談ください>>厚生労働省(外部サイト)
病院・施設などで結核患者が発生した場合
1)結核と判断した医師は、保健所へ届出を行ってください(感染症法第12条に基づく)
2)保健所で
(1)届出に基づいて結核患者さんと面接などを行い、接触者を把握します。(施設などへは、接触者の情報提供を求めます)
(2)接触者健康診断の対象範囲、検査の時期や内容を決定します。
(3)健康診断の対象者へ、健診について案内します。