更新日:2023年7月7日
エムポックスは、エムポックスウイルス感染による急性発疹性疾患です。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)において、4類感染症に位置付けられており、診断した医師は都道府県知事等に対して直ちに届け出ることが義務付けられています。
1970年にヒトでの感染が発見されて以来、中央アフリカから西アフリカにかけて流行していましたが、2022年5月以降欧米を中心に世界各国で報告が相次いでいます。沖縄県でも本人に海外渡航歴がなく、海外渡航歴のある者との接触歴が確認できない感染事例が報告されています。そのため、患者を診察する医師は海外渡航歴の有無にかかわらず当該感染症の可能性を考慮する必要があります。また、2022年5月以降の欧米を中心とした流行では、以下のような、従来の報告とは異なる臨床徴候が指摘されていることに留意する必要があります。
・発熱やリンパ節腫脹などの前駆症状が見られない場合があること
・病変が局所(会陰部、肛門周囲や口腔など)に集中しており、全身性の発疹が見られない場合があること
・異なる段階の皮疹が同時に見られる場合があること
つきましては、症状を呈する患者で下記の「疑い例」に関する暫定症例定義に該当する症例を認めた場合又は民間検査会社における研究用試薬を用いた検査により陽性と判明した場合には、下記4点についてご協力をお願いいたします。
・那覇市保健所保健総務課(098-853-7972)まで連絡して、検体採取や疑い例の者への聴取等その後の対応についてご相談ください
・最近の海外渡航歴を有する疑い例については、渡航歴、接触歴(性的接触歴を含む)、天然痘ワクチン接種歴等の詳細を可能な限り聴取ください
・ 感染症法第15条による保健所の積極的疫学調査へご協力ください
・下記関連リンク「国立感染症研究所 病原体検出マニュアル エムポックス(第4版)」の「検体の採取と保存」を参考に疑い例の検体を保存するとともに、保健所の求めに応じて、検体及び別記様式(病原体検査票)をご記入の上ご提出ください
疑い例の暫定症例定義(令和5年5月26日現在):原則、下記の1‐2全てを満たす者とするが、臨床的にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断した場合については、この限りではない。
1.少なくとも次の1つ以上の症状を呈している。
- 説明困難(*1)な急性発疹(皮疹又は粘膜疹)
(*1)水痘、風疹、梅毒、伝染性軟属腫、アレルギー反応、その他の急性発疹及び皮膚病変を呈する疾患によるものとして説明が困難であることをいう。ただし、これらの疾患が検査により否定されていることは必須ではない。
- 発熱(38.5℃以上)
- 頭痛
- 背中の痛み
- 重度の脱力感
- リンパ節腫脹
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 咽頭痛
- 肛門直腸痛
- その他の皮膚粘膜病変
2.次のいずれかに該当する。
- 発症21日以内に複数または不特定の者と性的接触があった。
- 発症21日以内にエムポックスの患者、無症状病原体保有者又は1を満たす者との接触(表レベル中以上)があった。
- 臨床的にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断をした。
サル痘患者等との接触の状況 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
創傷などを含む粘膜との接触 | 寝食をともにする家族や同居人 | 正常な皮膚のみとの接触 | 1m以内の接触歴3) | 1mを超える接触歴 | ||
適切なPPEの 着用や感染予防策 |
なし | 高1) | 高2) | 中1) | 中 | 低 |
あり | ― | ― | ― | 低 | 低 |
1)動物におけるエムポックスの感染伝播が見られる国でのげっ歯類との接触を含む
2)寝具やタオルの共有や、清掃・洗濯の際の、確定例の体液が付着した寝具・洋服等との接触を含む
3)接触時間や会話の有無等周辺の環境や接触の状況等個々の状況から感染性を総合的に判断すること
感染管理上の留意点
・「患者(確定例)、疑い例、接触者に対して、下記関連リンクにある「エムポックス患者とエムポックス疑い例への感染予防策」で示されている感染対策を実施すること」
・「疑い例に接する際には、接触及び空気予防策を実施すること。入院が必要となる場合は、個室(個室管理が望ましい。)で管理を行うこと。」
・エムポックスの患者については、全ての皮疹が痂皮となり、全ての痂皮が剥がれ落ちて無くなるまで(概ね21日間程度)は周囲のヒトや動物に感染させる可能性がある。
・外来においてフォローアップを行う場合には、自宅等における感染対策を徹底するとともに、自身の健康に注意を払い、症状が悪化する場合には入院治療を行うことができるよう、最寄りの保健所と連携をとること。
・エムポックスの患者が利用したリネン類を介した医療従事者の感染の報告があることから、リネン類を含めた患者の使用した物品の取り扱いには注意すること(下記関連リンク「厚生労働省 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて」の「痘そう」を参照のこと)。
・患者の臨床管理、下記関連リンク「厚生労働省 エムポックスに関する情報提供及び協力依頼について(令和5年5月26日事務連絡)」の「(5)治療薬とワクチンについて」1)、2)に記載の臨床研究への患者(確定例)及び接触者の参加については、国立国際医療研究センター国際感染症センター(DCC)に相談を行うことが可能である。
関連リンク
厚生労働省 エムポックス(感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について)(外部サイト)
国立国際医療研究センター国際感染症センター エムポックス(Mpox)(外部サイト)
国立感染症研究所 複数国で報告されているエムポックスについて(第5報)(外部サイト)
国立感染症研究所 複数国で報告されているエムポックスQ&A(第1報)(外部サイト)
国立感染症研究所 病原体検出マニュアル エムポックスウイルス(第4版)(外部サイト)
国立感染症研究所・国立国際医療研究センター国際感染症センター(DCC) エムポックス患者とエムポックス疑い例への感染予防策(外部サイト)
厚生労働省 感染症法に基づく消毒・滅菌の手引きについて(令和4年3月11日付け健感発0311第8号結核感染症課長通知)(外部サイト)